上手な遺言の利用方法

遺言は円満相続のための有効なツールです。しかし、ただ書くだけでは活かしきれません。
ここでは、相続による紛争を回避するための具体的な遺言のテクニックをお伝えします。 一部遺言は避ける

全財産のうち「○○の土地は長男に相続させる」といった一部分だけを書いた遺言は問題を引き起こします。
この場合、①長男はこの土地だけしか相続できないという意味か、②遺産分割の方法として、
法定相続分による相続の中身にこの土地を含めという意味か、③土地のほかに、法定相続分を
認めるという意味かわからなくなってしまいます。
特定の財産を相続させる場合でも、財産の一部についてだけではなく、全ての財産について記載するべきでしょう。

文言の例)
○○の土地は長男が相続し、他の財産は全て次男が相続すること


清算型遺言を利用する

遺産をそのままの形ではなく、金銭に換価して相続させる旨遺言に記載する方法です。
家などの形ある物だとどうしても平等に分けることができず、また人の好みによっても感覚的な差が残ってしまいます。
こういった場合に、全てをお金に換えたうえでそれを相続人間で分けるようにするというのも、有効なテクニックといえます。

文言の例)
相続発生後、ただちに全ての財産を金銭に変換し、それを法定相続分で相続すること


遺言執行者をつける

たとえ遺言があっても、その内容に反する遺産分割協議がなされれば有効となってしまいます。
そのような場合でも遺言執行者がいれば、相続人は任意に処分などをすることができなくなります。
上記のように、遺産を清算する場合でも、信頼できる遺言執行者に任せたほうがスムーズに手続が進みます。
例えば財産の名義換えの手続をする場合でも、通常相続人全員の印鑑などが要求されるのに対し、
遺言執行者がいればその者だけで換えることもできるのです。
さらに、相続人以外の相手に不動産を遺贈する場合、遺言執行者がいないと相続人全員の協力が必要となります。
相続人と遺贈を受けるものは利害が対立する立場にあるため、手続のために苦労をする可能性が高まります。


補充型遺言を利用する

遺言の場合、作成したときと効力が発生するまでに時間差があるため、
書いていたときと状況が変わってしまうケースもあります。
例えば、姪っ子に「私が死んだらこの車をあげる」と約束して、遺言を残してあげたところ、
先に姪っ子が死んでしまうと遺言のその部分は効力を失い車の権利は宙に浮いてしまうことになるのです。
そこで、そのようなもしもの状況に備えて予備的な内容を遺言に記載しておく方法もあります。

文言の例)
1.次の不動産をA氏に遺贈する。
2.前項の遺贈の効力が発生しないときは、不動産はB氏に遺贈する。


しっかり書き換える

遺言は何度でも書き換えることがあります。前に書いたときと状況が変わった場合は
その都度遺言を書き換えたほうが無難でしょう。
遺言を書き換える場合には、どの部分の効力が残っているのか注意する必要があります。
例えば、A土地とB土地を持っている者が、一回目の遺言で「A土地は長男、B土地は次男に相続させる」という遺言を残したところ、
二回目の遺言では「A土地は三男に相続させる」という遺言をしたとします。
すると、現在生きている内容は①A土地は三男に相続と②B土地は次男に相続となります。
さらに、三男と仲たがいして、三回目の遺言として「前回の遺言は撤回する」という遺言をすれば、
一回目の遺言が復活して再び「A土地は長男が相続する」ことになるのです。
このように、書換えが繰り返されると内容が複雑となり、注意をしないと思いもよらぬ結果にならないとも限りません。


相続分の指定は避ける

相続分の指定は避けたほうが無難です。たとえば、本来の法定相続分が3分の1の相手に対し
「全財産の2分の1を相続させる」といった遺言を書くケースがこれに当たります。
この場合は、遺言を書いたものの結局は相続人間で遺産分割協議をしなければならないため、紛争を招く可能性があります。
紛争予防のためにも、できるだけ相続する財産まで具体的に指定したいところです。


遺留分を守る

兄弟姉妹以外の相続人には遺留分があります。そのため遺言によって遺留分を害された者がいる場合、
紛争を巻き起こすかもしれません。
反対に、紛争覚悟で遺留分を害する遺言を残すことは可能です。
ある相続人の遺留分を害していたとしてもその遺言自体は無効ではありません。
また、必ず遺留分を害された者がその分の財産等を請求してくるとは限りません。