皆様からお寄せ頂いている相続や遺言の事例集をまとめて掲載。
[ 相談内容 ]
夫が亡くなり、私と子供(未成年者)が相続人となっています。
不動産の名義を私の単独名義に変更する登記手続きをしてもらいたいのですが?

この場合、法定相続分での登記ならば特に問題がありませんが、遺産分割をしようとすると面倒になることがあります。
たとえば、「不動産の権利は母がすべて相続する」といった場合です。
未成年者は法律行為が原則できないため、法定代理人が未成年者に代わって法律行為を代理します。
しかし、この場合、母親と代理すべき未成年者の利害関係が対立する立場にあるので、母親は未成年者を代理して遺産分割協議をすることができません。
そこで、家庭裁判所に対して、未成年者を代理する『特別代理人』を選任してもらわなければなりません。
手続きから選任まで何ヶ月かかかります。選任にかかる費用と時間と手間が、一つ目の問題点です。
次の問題点としては、特別代理人を選任したからといって、特別代理人と母親の間で、未成年者に一方的に不利益な遺産分割協議をすることが難しい点です。
家庭裁判所では、特別代理人選任の際に、遺産分割協議書を提出させることがあります。
その中で、一方的に未成年者に不利な分割がされる予定だと、話を進めてもらえません。
未成年者だからといって、強制的に相続財産を放棄させることはできないという考え方です。
そこで、不動産をすべて母の名義にするならば、その分ほかの財産を未成年者に相続させるなどしてバランスをとる必要があるのです。
本件では、不動産の売却を急ぐ必要があったため、遺産分割をせずに法定相続分による相続登記を行い、その後すぐに不動産を売却しました。
この母親は、自分の権利の売主と、子供の権利を売るための法定代理人という2つの役割を担ったことになります。
なぜ、そんなことが可能なのか?と思われる方もいるかもしれません。子供は未成年者だし、上記の遺産分割のときと同様の趣旨で『特別代理人』が必要だというお考えでしょう。
しかし、不動産を売却する場合においては、母と子は利害が対立する関係ではありません。
売主と買主ならば利害対立関係ですが、双方が売主ということは協力関係とでもいうべきでしょうか。
利害が対立しないので、特別代理人の選任は不要であり、通常の法律行為と同じように親が子供を代理することが可能です。
もちろん、売却で得た代金を母親が全て自分のものとしてしまっていいということではありません。
